※2020年4月13日追記
こちらのブログ記事については給付基準変更前のものであり、
最新の内容ではございません。
したがいまして現在公表されている最新の給付基準に関しては、
こちらのブログ記事をご参照ください。
皆さんこんにちは。
名古屋市昭和区の税理士、服部大です。
緊急事態宣言が発令されて1日目。
政府の補償が追い付かず、これまで事業継続か悩んでいた企業が
あきらめて廃業を選択するケースが増えてきているそうです。
コロナ収束の時期が不透明であり、貯金を食いつぶしてでも固定費を支払い続け、
事業を継続させる選択をすること自体、現実的ではないと感じるかもしれません。
さて今日は政府から発表された現金30万円給付について、
その支給要件があまり馴染みのないものかと思いますので
少し解説していきたいと思います。
現金支給の要件は?
今回、現金30万円支給の対象となるのは
給与収入を得ているいわゆるサラリーマン世帯であり、
個人事業主や中小企業については別途最大で100万円や200万円の給付があるとのこと。
30万円の給付対象となるのは、コロナが拡大し始めた今年2~6月のいずれかにおいて
給与収入が減少した以下の2通りとなります。
①世帯主の年収ベースで住民税非課税水準に減少
②世帯主の月収が半分以下に減り、
年収ベースで住民税非課税水準の2倍以下
①及び②において、ともに「住民税非課税水準」という文言がありますが、
これは具体的にどのように算定されるのでしょうか?
住民税非課税の基準とは?
住民税の計算では基本的に所得税の計算過程を踏襲することとなりますが、
所得が少ない方への非課税規程に関しては住民税にて独自のものが定められています。
それは以下の所得基準によるものです。
合計所得金額≦35万円×(扶養親族の数+1)+21万円
なおこの算式は名古屋市にて定められたものであり、
他の自治体では上記金額に多少の差異があるかもしれません。
いずれにしてもこのような算式に当てはめて確認した結果、
合計所得金額が基準よりも下回っていれば住民税は非課税となります。
具体例:夫婦+子供2人の場合
では先ほどの非課税水準に具体的な数字を当てはめてみましょう。
世帯主及び扶養親族3名(配偶者と子供2人)の4人家族の場合は以下の通りとなります。
非課税水準:35万円×(3+1)+21万円=161万円
つまりコロナの影響により給与収入が減少し、
給与所得が161万円以下に減少すれば、①の要件を満たすということになります。
また②については非課税水準の2倍以下となっているため、
月収が半減かつ所得が161万円×2=322万円以下であれば、②を満たします。
ただしここで注意が必要なのは、
上記の非課税水準は所得ベースであり、年収ベースではありません。
年収ベースに換算すると…?
では給与の年収ベースに置き換えると、
先ほどの非課税水準はどのようになるでしょうか?
名古屋市の非課税水準に当てはめたものは以下の表のとおりです。
①住民税非課税となる年収 | ②月収半減かつ住民税非課税の2倍となる年収 | |
単身の場合 | 100万円(月収 83,000円) | 200万円(月収 332,000円以上⇒166,000円) |
2人家族の場合 | 156万円(月収130,000円) | 312万円(月収 520,000円以上⇒260,000円) |
3人家族の場合 | 205万円(月収171,000円) | 410万円(月収 684,000円以上⇒342,000円) |
4人家族の場合 | 255万円(月収213,000円) | 510万円(月収 852,000円以上⇒426,000円) |
5人家族の場合 | 305万円(月収254,000円) | 610万円(月収1,016,000円以上⇒508,000円) |
①の要件である、年収ベースで住民税非課税水準以下というのは
なかなか厳しい条件であることが上表からも見て取れます。
家族の人数が増えれば現実的な数字に近づいてきますが、
単身の場合については月収約8万円であるため、
正社員でそこまで給与が下がることは現状では考えづらいかもしれません。
反対に②のように「月収が半減かつ非課税水準の2倍」による判定では、
『月収半減』という判定要素が適用を難しくしているように感じます。
【注意】世帯合計ではなく『世帯主ひとり』で判定する
先ほどの表に当てはめて給付対象かどうかの判定を行うわけですが、
ここで注意が必要なのは
世帯合計ではなく、世帯主ひとりで判定を行う点にあります。
これにより、下図のように世帯全体では同じように収入が減少していたとしても
30万円の給付がもらえるケースともらえないケースが出てきてしまいます。
まず大前提として左の家族も右の家族も、
世帯合計の月収は減少前で50万円、減少後で25万円であるのは同じです。
しかしながら左の家族のケースでは世帯主の月収が半減かつ
住民税非課税水準の2倍以内のため30万円給付の対象となりますが、
右の家族のケースでは世帯主の月収が35万円⇒20万円のため半減しておらず、
給付基準である2つの要件をいずれも満たさないため
30万円の給付金は受け取ることができません。
今回の給付の要件が世帯合計ではなく世帯主ひとりに限定しているため、
このような不公平感が生ずる原因となっています。
この辺りは今後制度実施を行う上で変更が入るかもしれませんね。
30万円給付は企業を助ける一手となるか
今回の30万円給付は事業主や企業を対象とするものではなく、
国民のひとりひとりが救済されるものとして考えられていますが、
私はこの制度を上手く活用していけば
日本国内の企業負担も多少は軽減できるのではないかと思います。
どういうことかと言いますと、
これまで給与削減を検討していなかった企業でも、今回の給付要件を満たすように
あえて従業員の給与を一時的に減額することも検討するのではないかと思います。
特に社員数が多い会社は固定費の大幅な削減に繋がります。
例えば従業員数が200人の法人であれば、
給付金分30万円×200人=6,000万円の経費削減が可能となります。
従業員からしても、
減少した給与30万円分は国からの給付金で補填されるのであれば
収入自体に変わりはありません。
したがって今回の給付金30万円は、
ある意味では企業救済としての一手として活用されるのではないかと感じています。
最後に
本日はコロナ対策として発表された現金給付制度についてお話ししました。
今後細かい部分は見直しがされるかもしれませんが、
現状では問題点もいくつか孕んでいるものと考えられます。
そして何より迅速な実行を政府には期待したいものです。
(ドイツではたった2日で現金給付を実行したとのことですが、
昨日の安倍首相の話では5月中を目指すとのこと。)
また要件に変更等があれば改めてお伝えいたします。
では今日もお読み頂きありがとうございました。
またお会いしましょう。
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