税理士業務の根幹にあるものとして、「顧問契約」の存在が挙げられます。
顧問先の存在があるからこそ税理士事務所は安定的な収入を確保することにも繋がり、
従来型の事務所では、顧問先からの売上が全体のほぼ100%を占める例も少なくありません。
しかし顧問件数が増えることにより事務所の基盤が安定する一方で、
いくつかのデメリットがあることも事実だと思います。
今回は税理士業務の裏側として、”顧問契約のジレンマ”についてお話ししたいと思います。
ジレンマその1:件数が増えるほどサービスの質が低下する
まず大前提として、税理士業務はモノを扱う業務だけなく、
税理士が自身の知識やノウハウを提供することで顧客満足を獲得することとなります。
必ずしも「時間を掛けるほど良いサービスが提供できる」というものではありませんが、
顧問件数が増えるにつれ、1件あたりに掛けられる工数は確実に減少することとなり、
サービスの質を維持することが難しくなっていきます。
そうすると元々のサービス内容であれば満足できていた顧問先も、
だんだんと品質の低下を感じる機会が増えていき、
結果的に顧問契約解消や値下げ要求にも繋がる可能性があるでしょう。
このような流れに陥っても、業務効率化によって工数を削減できれば良いのでしょうが、
それが難しければパートさんや外注に依頼したり、
薄利多売のビジネスモデルに転換することも検討しなければならないかもしれません。
ジレンマその2:件数が増えるほどリスクも増える
「ジレンマその1」とも関連することではありますが、
顧問件数が増えることによって税理士としてのリスクも増加していきます。
税理士は独占業務を有する国家資格である以上、
専門家として数々のリスクを抱えることとなります。
(税理士専用の賠償責任保険もあるくらいです。)
顧問契約が増え、1件あたりの工数が減るにつれて
ミスや漏れが発生する可能性も次第に高まっていくでしょうから、
顧問税理士としてのリスクもどんどんと増していくことになります。
職員数は十分にいたとしても、
職員の習熟度が低かったり、上司がほとんど不在にしていて機能していない等、
組織としての危険度が高い事務所も少なくないのではないかと思います。
したがって事務所のキャパシティを超えた顧問件数を抱えることは、
品質低下による顧客流出リスクだけでなく、
賠償責任を負うなどの法的なリスクも高まることを意味するのです。
(これは税理士業務に限ったことではありませんけどね。)
自分のキャパがわからないうちは、顧問件数は慎重に増やすべき
それでは「最適の顧問件数は何件か?」と聞かれても、正直言って私にもわかりません。
事務所ごと、税理士ごとのサービス内容や業務の進め方にもよるものでしょうから、
一括りにすることは難しいものだと思います。
私自身についてはまだまだ顧問契約を増やす余力はあると思いますが、
かといってあと10件も増やせるほどのキャパは残っていないと感じています。
税理士の場合には紹介会社を活用したり、
自ら広告を売ったりすることによって顧問契約を獲得することは可能です。
しかしいたずらに顧問件数を増やしまくったとしても、
それを回せるだけの土台を用意できていなければ意味がありません。
したがって自分自身のキャパシティを完全に掴めていない状況においては、
一気に件数を増やすことよりも、少しずつ自分の状況を確かめながら
顧問件数を拡大していくことが理想かなと個人的には思っています。
最後に
今回は”顧問契約のジレンマ”についてお話ししました。
税理士業務の基盤であるからこそ、慎重に慎重を重ね、
顧問先のお客様にご満足頂けるような仕事を続けなければいけませんし、
そのための環境は自分自身で用意していく必要があります。
この辺りも日々勉強ですね。
それでは最後までお読み頂きありがとうございました。
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