皆さんこんにちは。
名古屋市昭和区の税理士、服部大です。
明朝、いよいよ待ちに待ったプレミアリーグが再開します。
当然無観客試合なので、
これまでのサッカー中継とは雰囲気も盛り上がり方も大きく異なるのでしょうが、
たとえ無観客だろうと今は試合が開催されることだけでもありがたいことです。
日本でも今週金曜からプロ野球が開幕しますね。
スポーツ好きとしてはテレビ中継でスポーツ観戦できるというだけでも、
心の健康を維持するという面では大きく貢献することでしょう。
さて今日は株主総会のお話をしたいと思います。
コロナ禍で定時株主総会を開催できない場合
日本では昔から4月~3月をひとつの年度として捉えるため、
今でも3月決算の法人が最も多いわけなのですが、
その3月決算法人の決算後に行われる定時株主総会については
通常6月に開催されます。
しかしご存知の通り、今年はコロナ禍の影響があちこちに出ており、
緊急事態宣言解除後もまだまだ平常通りとはいかないことの方が多いです。
大人数が集まることの多い株主総会についても例外ではなく、
6月中の開催を見送るケースも少なくないことでしょう。
そのように株主総会を延期する場合、
気になるのは役員報酬に関する改定や届出の期限についてです。
①定期同額給与の取扱い
まずは定期同額給与についてですが、
定期同額給与というのは役員報酬の月額と捉えて頂ければ結構です。
役員報酬は期中に自由に改定できてしまうと、
「今期は思った以上に利益が出そうだから、役員報酬を増額して節税しよう」
というような利益調整がいとも簡単にできてしまいます。
それを防止するために、
役員報酬については基本的には毎月同額で計上を続けないといけません。
「基本的には」というからには当然例外もあるのですが、
その辺りについては過去のブログで解説していますので
もし宜しければ以下のブログをご参考ください。
『【Q&A】コロナによる役員報酬の期中減額は業績悪化改定事由に該当するか?』
では役員報酬の月額はいつなら改定して良いのかと言いますと、
定期同額給与の改定は
「事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(3月経過日等)まで」
が期限として定められています。
つまり月額を変更したい場合には期首から3ヵ月以内に変更して下さいね、ということです。
しかしいざ改定しようと思っても、
役員報酬の改定については株主総会での承認決議が必要となります。
そのため「コロナ禍で株主総会が開催できない!」となってしまうと、
役員報酬の改定決議が期首から3ヵ月以内に行えないケースも出てきてしまいます。
そのような事例の結論としては、
新型コロナの影響で株主総会の開催が延期された場合には「特別の事情」に該当し、
期首から3ヵ月を経過していても定期同額給与の改定は認められる
とのことです。
②業績連動給与の取扱い
「業績連動給与」というもの自体に馴染みのない方が多いと思います。
かく言う私も実務では「業績連動給与」を目にしたことはありません。
その理由は業績連動給与は同族会社では適用できないためです。
同族会社というのはざっくり言うと、
株主同士で関係のある人たちをまとめたときに、
持ち株数上位の3グループで過半数の株式を占める会社を言います。
全然わかりやすくないですよね。笑
つまり業績連動給与が適用できる「同族会社ではない会社」というのは、
1人でたくさんの株を持っている人がおらず、
第三者も含めていろんな人がバラバラに株を持っているような会社です。
一言で言えば大企業であることがほとんどです。
一般の中小企業は社長一家が株式のほぼすべてを保有していることが多いので、
中小企業が業績連動給与を適用するケースはほとんどありません。
さて前置きが長くなりましたが、
業績連動給与についても定期同額給与と同じように、
期首から3ヵ月以内の決定が必要となります。
しかし定期同額給与のように
「特別の事情」の場合には3ヵ月経過後でもOKという規定がないため、
株主総会延期により期限後となった時には不可ということになります。
お伝えした通り業績連動給与自体が馴染みの薄いものであるため
省略しようかとも思ったのですが、
定期同額給与との違いをお伝えするためご説明させて頂きました。
※2020年6月22日追記
経産省の発表された文書により、
株主総会が延期された場合においても
一旦決算後3ヵ月以内に取締役会で業績連動給与を決定し、
その後株主総会を開催できた時に承認を受ければ可能
とすることが明らかになりました。
③事前確定届出給与の取扱い
毎月定額を計上する定期同額給与とは異なり、
事前確定届出給与はあらかじめ届出さえ提出していれば、
臨時的な報酬支払いが可能となります。
そのため例えば
・非常勤の役員に年1回だけ報酬を払いたい
・役員のモチベーションアップのために賞与を払いたい
というようなニーズがある場合には、
事前にしっかりと届出さえ出していれば損金に算入することができます。
では肝心の届出をいつまでに提出すれば良いのかというと、
以下の2つのうちいずれか早い方と定められています。
・期首から4ヵ月後
・株主総会の決議から1ヵ月後
したがって例えば3月決算の法人について、
6月での定時株主総会の開催が8月へと延期された場合には
上記期限のうち「期首から4ヵ月」に当たるのが7月末となるため、
下図のように8月の株主総会よりも前に届出の提出期限が到来してしまうことになります。
このように新型コロナの影響により届出が間に合わない場合には、
提出期限の延長が認められるようです。
その場合にも特別な申請書を別途提出する必要はなく、
事前確定届出給与に関する届出書の余白に
「新型コロナウイルスによる届出延長申請」である旨を記載すれば良いようです。
この辺りの取扱いについてはコロナによる期限後申告と同様ですね。
株主総会延期に関する注意点
新型コロナの影響による税務上の取扱いについては、
申告期限や納期限などについても比較的柔軟な対応が可能となるケースが多いです。
今回見てきたように、
株主総会と役員報酬改定の取扱いについても例外ではありません。
しかしこれを安易に捉え、
「期限後に改定しても議事録や届出などの書面さえちゃんと作っておけば良い」と
高を括ることはリスクが大きいものと考えられます。
先ほど業績連動給与のお話しした時に中小企業の株主構成についても触れましたが、
多くの中小企業では社長やそのご家族が株主であるケースが大半です。
そのような家族経営の会社において、全株主が同居していたり、
普段一緒に働いている状態で株主総会が開けなかったなど理屈として通るでしょうか?
私が税務調査官ならば、そのような根拠は事実と反するものとして、
「特別の事情」による遅延とは見なさないでしょう。
このように「特別の事情」というものはどうしても原則通りにはできない理由と、
それを証するものが具備されて初めて安心して適用できるものです。
特例を濫用することは非常に大きなリスクを伴いますので、
本当に株主総会を延期すべき理由があるとき以外は本来の期限をお守りください。
またやむを得ず株主総会を延期する場合においても、
招集通知の保管や延期を決断した顛末について議事録でもメモ書きでも構いませんので、
後から振り返っても確認できる記録として会社に保管しておくことを強くお勧めいたします。
最後に
今日は株主総会を延期した場合の取扱いについてお話ししました。
コロナの影響により、税務上も原則以外の特例を使うケースが増えています。
しかしお伝えした通り、「特例があるから大丈夫」と過信するのではなく、
基本的には原則通りに行うことを目指すようにしてください。
そしてどうしてもできない場合には、
その根拠を書面でしっかりと残すことを徹底してください。
それでは本日もお読み頂きありがとうございました。
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