皆さんこんにちは。
名古屋市昭和区の税理士、服部大です。
本日は前回お届けした『【税理士監修】会社に副業がバレたときの合理的な言い訳を考えてみる《前編》』について、具体例を用いてどの言い訳が最も筋が通っているのか検証していきたいと思います。
前回の復習 ~抑えておくべきポイント~
前編では、
会社に対する言い訳がバレてしまわないように
気をつけなければならないこととして以下のを2点を掲げました。
➀整合性:‟実際の副業”と‟言い訳”の所得区分が同じかどうか
➁継続性:毎年継続的に所得が増えてもおかしくないか
言い訳自体が住民税決定通知書との辻褄が合っているか、
毎年住民税が増えたとしてもおかしくないか
このあたりの要点をしっかりと抑えておかないと、
あなたの言い訳はきっと簡単に見破られてしまうことでしょう。
したがってこの2つの評価ポイントをもとに
具体的な言い訳の実用性を判定してみたいと思います。
なお副業にも色々と種類があり、種類によって所得区分も変わることとなりますが、
ここでは一般的に多いと思われる雑所得(総合課税)を前提に話を進めたいと思います。
(せどり、アフィリエイト、執筆、クラウドソーシング、ウーバーイーツなど)
たまたま株や不動産を売って儲かった:10点
【採点基準】
➀所得区分の整合性:✖
➁継続性:✖
急に会社から呼び出しを食らって副業について問われたら、
ついついこんな言い訳をしてしまいそうですよね。
しかし株式投資にせよ、不動産の売却にせよ、
いずれも雑所得ではなく譲渡所得(株の配当であれば配当所得)に該当しますので、
住民税決定通知書を見れば
「あれ?譲渡じゃなくて雑所得が増えてるぞ!?」と
簡単に嘘がバレてしまうこととなるでしょう。
また来年以降も住民税が増えたときには
また別のものを売ったことにしないといけなくなりますので
どんどん窮地に追い込まれていくことは確実です。
したがって所得区分の整合性、継続性ともに評価は✖ということになります。
メルカリなどで私物を売って儲かった:30点
【採点基準】
➀所得区分の整合性:✖
➁継続性:▲
最近ではメルカリで家にあるいらないものを現金化する人も増えています。
その流れに乗じて副業がバレたときの言い訳にも活用できそうなものですが、
実は生活用品の売却については所得税はかかりません。
単価が30万円以上の貴金属や美術品であれば課税されるのですが、
その場合には譲渡所得となるため、どのみち所得区分の整合性が取れません。
メルカリ等で雑所得として申告が必要となるのは、
最初から販売目的で商品を仕入れてメルカリ等で販売した場合です。
つまりそれってまさに副業ですよね。
この言い訳では、
メルカリで売ったものを雑所得として申告=自ら副業を認めている
という構図になりかねません。
変なことを口走るあまり、
自分で副業していることを認めてしまわぬようご注意ください。
国内FXはじめました:50点
【採点基準】
➀所得区分の整合性:▲
➁継続性:〇
株式投資ではなくFXを始める方も増えていることでしょう。
FXであれば毎年所得が増えたとしても、
上手いことやっているんだなと思ってもらえることでしょうから
継続性という意味ではGoodだと思います。
また所得区分についても、株式投資とは異なり、
FXは雑所得として分類されますので一見ピッタリのように思えます。
しかしFXについて一つ注意が必要なのは、
国内FXの場合には総合課税ではなく『分離課税』となることです。
『分離課税』は株式投資についても該当することなのですが、
株式投資やFXの儲けとなる金額に対し、
入金される際に適切な所得税や住民税が天引きされる仕組みです。
つまりこの『分離課税』が適用される所得については、
儲けが出たタイミングで税金が取られている(=納税済み)ため、
給与から毎月天引きされる住民税にはプラスされないのです。
したがって国内FXを始めたとしても、
給与天引きされる住民税の額には影響がないはずなのです。
なので会社側がこの辺りの細かい税制に詳しくなければ
すんなりと受け入れてくれるかもしれませんが、
もし詳しい人であれば「国内FXなら分離課税だろう」と言われてしまうかもしれません。
海外FXはじめました:90点
【採点基準】
➀所得区分の整合性:〇
➁継続性:〇
実はFXについては国内FXと海外FXで税務上の取扱いが変わります。
国内FXは上述のとおり雑所得の分離課税ですが、
海外FXの場合には雑所得の総合課税となります。
そう。
多くの副業が該当する雑所得の総合課税と全く同じ所得区分なのです。
海外FXであれば毎年所得が増えたとしてもおかしくないですから、
継続性という面でもバッチリでしょう。
ではなぜ100点満点ではないのかというと、
FXのことを知らないのに「海外FXやってます」と言うのはハードルが高い気がするからです。
その後会社の人から、
「へぇー、そうだったのか!
私もやっているんだがキミはどんなやつをやってるのかね?」
なんて突っ込まれた日には、
今度は「上手にはぐらかさないといけない」という新たな問題が立ちはだかることでしょう。
したがってこのような言い訳は税務上、理にかなってはいるのですが、
最低限の知識は身につけておかないと不安が残るということで10点減点としました。
家族に名義を貸した:80点
【採点基準】
➀所得区分の整合性:〇
➁継続性:〇
こちらの言い訳もよくあるものだと思いますが、
「「実際には家族が営んでいる事業を、自分の名前で行っている」
といういわゆる名義貸しです。
「あくまで実際に事業をしているのは家族であり、
自分自身は一切そちらには携わっていません」ということであれば
会社からの理解も得られるかもしれません。
このような理由であれば、本業である給与所得がある手前、
事業ではなく雑所得(副業)として申告していることにも筋が通りますし、
毎年継続的に雑所得が増えたとしてもおかしくはないですね。
それでも100点にはしなかった理由としては、
「どんな事業をしているの?」と言われた時に更なる嘘を用意する必要があることと、
副業の言い訳としてはOKだとしても、
名義貸し自体により会社からの印象が悪化する可能性があるからです。
所得税では名義が誰かではなく、
実質的に所得を得ているものが誰かによって課税されるべき人間が決まります。
(=実質所得者課税といいます)
したがって名義貸しを行っていることは、
不当に税金を減らしている人であるという良からぬ印象を持たれるリスクがありますので
減点対象とさせて頂きました。
仮想通貨をはじめました:100点
【採点基準】
➀所得区分の整合性:〇
➁継続性:〇
ビットコインをはじめ、現在では数多くの仮想通貨が存在しています。
かつては「億り人」なんて言葉が生まれるほど値上がり益が出た仮想通貨ですが、
今なお続けている方もたくさんいらっしゃることでしょう。
このビットコインによる儲けについては、
所得税法上、雑所得の総合課税に該当しますので所得区分はピッタリ一致しますね。
また毎年利益が出たとしても不思議ではありませんので、
継続性という意味でも問題ないかと思います。
その上で海外FXや名義貸しではつけなかった100点満点を仮想通貨でつけた理由としては、
自分が詳しくなくても何とかそれっぽい感じで言いやすいかなと思ったからです。
「友達に詳しい人がいて、アドバイス通りやってみたら儲かりました!」
というフランクな回答でもそれらしく聞こえるのは、
海外FXに比べて仮想通貨の方が「ライト層」が多そうな印象だからです。
したがって私としては、
副業がバレたときのベストな言い訳は「仮想通貨で儲かったから」とさせて頂きます。
最後に
今日は会社に副業がバレたときの言い訳の後編をお届けしました。
一点補足なのですが、
投資については副業に当てはまらないケースがほとんどです。
その理由は、投資は副業ではなく「資産運用」にあたると考えられているからです。
したがって仮想通貨や海外FXなどの言い訳自体が副業に該当する可能性は
極めて低いものとしてお話しさせて頂きました。
正直に話して理解してもらうことが最適であることは間違いありませんが、
どうしても言い訳しないといけないケースなどでは参考にして頂ければと思います。
なお今回お伝えした内容も含め、
仮に言い訳がバレてしまったとしても私は一切責任を負いかねますので、
すべては自己責任でお願い致します。
それでは本日もお読み頂きありがとうございました。
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