7月より申請受付を開始している家賃支援給付金。
しかし公表されている経済産業省のFAQを見ても、
社宅が家賃支援給付金の対象となるのかわからない
という問題が発生しています。
コールセンターに連絡しても、
担当者によってOKだったりNGだったりと情報が錯綜していましたが、
このたび税務研究会による中小企業庁への取材によって、
社宅の適用可否についての回答が判明しましたのでお伝えいたします。
”転貸”の解釈で大混乱!
以前公表されたFAQでは、
社宅の取扱いについてはこのような記述がありました。
法人が社宅・寮に用いる物件を賃貸借契約等に基づいて借り上げて従業員を住まわせ、
当該物件の賃料を当該法人の確定申告等で地代・家賃として計上しているのであれば、
原則として給付対象となります。
他方、賃貸借契約に基づいて従業員に転貸している場合は対象外となります。
この文章で問題なのは、
ココがダメ
結局どのような場合に「転貸」に該当するのかが全く記されておらず、
「役員や従業員から1円でも徴収していたらダメなの?」
ということが判断ができないことにあります。
会社が借り上げている社宅や社員寮を無償で従業員等へ貸してしまうと、
経済的利益については給与課税をしなければならないという問題が生ずるため、
実務上は給与課税を回避するために、
家賃の一部を従業員本人から徴収することが一般的なのです。
したがってこの従業員等から徴収していればNGという解釈であれば、
実質ほとんどの事業者が社宅は適用不可となってしまうため、
家賃支援給付金申請の現場は大混乱に陥っていたのです。
過去の最高裁判決で”転貸”の意義が明確にされていた!
昭和31年11月16日に下された最高裁判決で、
“社宅”の使用関係について、
従業員から「世間並みの家賃相当額」を徴収している場合には、
従業員に対して“転貸(賃貸)”しているものと判断できる
という旨が示されていました。
裏を返せばこの判決は、
「世間並みの家賃相当額」を徴収していない場合には、”転貸”には当たらない
というように解釈することができます。
中小企業庁から「社宅家賃の一部を徴収している場合には転貸にあたらない」との回答が!
上記の最高裁判決をもとに、
税務研究会が中小企業庁へ取材を行ったところ、
例えば給与課税を避けるために、
役員や従業員から賃貸料相当額(※)を徴収しているようなケースでは、
近隣地域の相場を踏まえた「世間並みの家賃相当額」を徴収していることにはならないため、役員への“転貸”には該当しない
との回答が得られたようです。
なお(※)の賃貸料相当額とは、
固定資産税の課税標準等をベースに計算した金額や、
社宅の借り上げ家賃の〇〇%というものが該当します。
つまり従業員ではなく第三者に貸し付けるような水準で家賃を徴収している場合を除き、
重要ポイント
給与課税を受けないように一部従業員等から回収している場合には、
社宅家賃も給付金の対象に含めて差し支えない
ということになります。
社宅・社員寮の取扱いに関する結論
今回の情報を整理すると、
以下のフローチャートのようにまとめることができます。
ココがポイント
したがって家主への家賃の一部を役員や従業員に負担させる程度のものであれば、
社宅家賃も給付金の対象として申請をして構わないということになります。
除外されるのは、『受取賃貸料>支払賃借料』といった
物件の貸し借りによって会社側が運用益を計上するようなケースが想定されるため、
一般的な社宅契約であれば給付金対象である
という解釈で問題ないのではないかと思います。
誤った情報により、社宅を除外して申請してしまった場合の救済はあるのか?
申請受付開始後にこのような取扱いの詳細が判明したことによって、
はてな
本来ならば社宅も含めて申請が可能であった事業者が
すでに社宅家賃を除いて申請してしまった場合に救済されるのか
という問題が生じます。
これに関しては、現時点では国としての見解が発表されていないため、
明確な回答をお伝えすることができません。
まずはコールセンターへご確認頂くようお勧めしますが、
制度としての明確な指針が示されていない以上、
申請は一度しかできません
という回答しか得られないかもしれませんね。ただ確認のためにも、
一度コールセンターへご連絡された方が宜しいかと思います。
最後に
今回は家賃支援給付金のうち、
「社宅」に関する取扱いの回答についてお話ししました。
全国で申請漏れとなってしまっているケースが相次いでいることと思います。
すでに申請済みの方の救済の有無はわかりませんが、
これから申請する方については誤って社宅を除外しないようご注意ください。
それでは最後までお読み頂きありがとうございました。
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