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税金のお話

チュートリアル徳井の復帰から改めて考える『加算税』の効果

皆さんこんにちは。

名古屋市鶴舞在住の税理士、服部大です。

三連休もあっという間に最終日。

名古屋は気持ちのいい晴天に恵まれています。

こんな日はおしゃれにカフェでブログ執筆でもしたいところですが、

新型コロナウイルスの影響も考えて

不要不急の外出は控え、自宅でせっせと入力しています。笑

さて、Yahooニュースを見ていたら気になる記事があったので

今日はそのことについてお話ししたいと思います。

『申告漏れ』事件からの復帰

そのニュースとはブログタイトルのとおり、昨年10月に世間を賑わせた、

お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんの復帰の件です。

当時の吉本興業は「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんの反社会勢力との問題もあり、

徳井さんの事件は、吉本興業に対する世間の不信感が高まっている中でのことでしたね。

宮迫さんと徳井さんのどちらが悪質なのかを議論されているような

ワイドショーやメディアもいくつかあったように思います。

そんなこんなで紆余曲折ありましたが、

今回、約4ヵ月の期間を経て芸能活動に復帰することが決まったようです。

徳井さんの復帰が早いのか遅いのか、そもそも復帰すべきかそうでないかについては

特段私の意見を述べるつもりはありませんが、(というか特に意見はありません。笑)

このような事件の背景にはどのような問題があるのか、

そこにはいくつかの税法上のポイントが絡んでいますので、

改めて税理士の立場としてお伝えできたらいいなと思います。

事件の概要

事件の詳細は以下のとおりです。

チュートリアルの徳井さんが設立した法人「チューリップ」について、

2016~2018年の3年間で1億1800万円の申告漏れが発生。

それ以前にも法人税の滞納を繰り返していたとのこと。

また「チューリップ」から受け取っていた徳井さん個人の役員報酬についても、

無申告を繰り返していた事実が判明し、

これらの事実を重く見た税務当局は重加算税を課すこととし、

それらを含む追徴税額は3400万円超との見通しであった。

ざっくり言うとこんな話でしたよね。

それではここからポイントを整理してみましょう。

「申告漏れ」と「所得隠し」、「脱税」の違いは何?

今回の徳井さんのケースは「申告漏れ」という表現で報道されていましたね。

税金の追徴に関するニュースでよく耳にする

「申告漏れ」、「所得隠し」、「脱税」にはどのような違いがあるのでしょうか?

何となく言葉のニュアンスでおわかり頂けるかもしれませんが、

ここではその定義を詳しく解説していきます。

申告漏れ

まず「申告漏れ」については、経理上のミスなどにより、

税金を課するべき所得が過少となっていた場合を指します。

ここでのポイントは「意図的でないこと」です。

この「申告漏れ」の場合に課される追徴税額(罰金)は

過少申告加算税や無申告加算税、不納付加算税のいずれかと延滞税となります。

所得隠し

その名のとおり、「意図的に、故意に」税金を減らしたというケースを指します。

具体的には売上の隠蔽や、架空経費の計上などの悪質な行為が例として挙げられます。

追徴税額としては重加算税と延滞税が課されることとなります。

この重加算税というものは、仮装や隠蔽行為により

税金を不当に免れたことによって課されるもので、加算税の中で最もペナルティが重く、

前述した過少申告加算税や無申告加算税に比べても

2倍超という高い税率が設定されています。

脱税

最後に「脱税」についてですが、脱税の場合も行為自体は「所得隠し」と同様ですが、

より悪質性が高く、刑罰に科すため検察庁により告発されるものを指します。

いわゆる「マルサ」による強制捜査によって発覚するものですね。

(ちなみに私が生まれる前に流行った映画『マルサの女』では、

国税局査察部の活躍を描いていますが、その再現度があまりにも高く、

当時隠語であった「マルサ」という言葉が世に知れ渡ってしまったため

現在は「マルサ」ではない俗称が用いられているそうです。)

少し話が脱線しました。

なぜこの用語の説明を行ったかというと、

マスコミの報道では意図的でないことを意味する「申告漏れ」という表現を用いましたが、

税務当局が課した追徴税額は重加算税であり、

徳井さんの無申告の状態を「意図的である」と判断したことを示しています。

つまり報道と実態では表現に乖離がある、というのが個人的な感想です。

なぜ会社を作ったの?

さて、徳井さんは自らの会社「チューリップ」を設立し、

そこから役員報酬をもらう形で処理を行っていました。

個人事業主が法人を設立する話は聞いたことがあるかもしれませんが、

そもそもなぜそのような行動を取るのでしょうか?

その答えは、『法人税と所得税では税率が異なるから』です。

まず法人税率については、資本金1億円以下の中小法人の場合、

所得800万円までは一律19%(800万円を超えたらその部分は23.2%)

という税率により税金が課されます。

それに対して所得税率は、いわゆる超過累進税率を採用しており、

所得が大きくなればなるほど税率が上昇します。

最低5%~最大では45%もの税率により税金が課されます。

したがって所得が少ないうちは所得税率の方が低く済みますが、

一定ラインを超えると所得税率が法人税率を上回ってしまうのです。

そうなったときに法人を立ち上げ、会社で収益計上することで

税負担を軽減することができるのです。

徳井さんの場合、テレビで見ない日はないような売れっ子芸能人でしたから、

所得税率よりも法人税率の方が低かったことは想像に難くありません。

本当に「だらしなさ」が原因なの?

昨年10月に記者会見を行った際、

徳井さんはその原因を「想像を絶するルーズさ」と表現しましたが、

「いやいや、絶対わざとでしょ」

と思われた方も多いのではないでしょうか?

そもそも上述したように、わざわざ会社を立ち上げてまで

税金を減らそうという意識のある人が

ズボラで申告を失念するということがあるのでしょうか?

これに関しても私見を述べるつもりはありませんが、

先ほどお伝えした通り、少なくとも税務当局は悪質だと判断したようですね。

ただ個人的には、徳井さんのケースも含め、

ペナルティである加算税の体系そのものが無申告を誘発しているとも感じます。

加算税体系は適切か?

徳井さんの場合は、繰り返された無申告が悪質だと判断され、

重加算税という重いペナルティが課されました。

しかし一般的な「申告漏れ」であれば、

本来課されるペナルティは「無申告加算税」となります。

無申告加算税の税率は、最大で20%。

対する重加算税はというと

申告内容に仮装・隠蔽があった場合には35%の税率で課税されます。

この20%と35%の差が一つの考えをもたらします。

それは「税務署にバレたら申告・納税すればいい」という考えです。

つまり変に過少に申告して重加算税を食らうよりも、

無申告のまま放置してしまった方がリスクが少ないとも言えてしまうのです。

ちなみに単なる無申告の場合と仮装・隠蔽行為があった場合では

税務署が税務調査にて遡及できる期間にも差があります。(無申告の場合は5年、仮装・隠蔽の場合には7年。)

これらの加算税体系の実態が、

「バレたら直せばいいや」という納税者の考えに拍車をかけてしまいかねないのです。

(徳井さんの場合は、無申告でも重加算税を課されてしまっていましたが…。)

最後に

さて、本日は「チュートリアル」徳井さんの復帰のニュースを聞いて、

改めて税務上のポイントを整理してみました。

ご参考いただければと幸いです。

では今日もお読み頂きありがとうございました。

またお会いしましょう。

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服部 大

2020年2月に名古屋で独立開業したギリギリ平成生まれのゆとり税理士/中小企業診断士です。 こちらのブログでは、私自身の事務所経営や日々の生活で感じたことを自由気ままに綴っていきます。

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