皆さんこんにちは。
なごやん税理士の服部です。
いよいよ年末って感じが一層強まってきましたね。
勤務税理士として最後の年末ですが、今年は開業に向けた準備を少しでも勧められたら良いなって思っています。
さて今日のお題ですが、タイムリーな話題ということで年末調整について書いてみたいと思います。
年末調整の仕組み
お勤めの方々、皆様の勤務先では年末調整は終わりましたでしょうか?
実は私の勤務先ではちょうど今日が冬のボーナス支給日であり、毎年その際に年末調整の還付金も手渡されます。
あ、ボーナスも手渡しですよ。
ボーナスを貰えるありがたみや貰った側のモチベーションアップなどのためでしょうか。(確かに嬉しいですが地下鉄で帰るの少し怖いです笑)
さて年末調整の還付額ってそこまで多額にはならないですが、臨時収入みたいで嬉しいですよね!
でも源泉所得税の仕組みって正しく理解できていますか?
サラリーマンの源泉所得税の仕組み
私達サラリーマンが納めるべき税金(所得税)は、年収で決まります。(お給料以外の収入がある方はここでは考慮していません。)
裏を返せば、年収が決まって初めて正しい税金を計算することが出来るのです。
「え、でも毎月の給料から所得税引かれとるやん」
って思ったアナタはきっと素直で良い人です。
毎月給与から無慈悲に引かれている税金は、あくまで仮の金額なのです。(なのでこれからは税金(仮)としましょう。)
だって年の中途の段階では1年トータルの年収なんてわかりませんものね。
ちなみにこの税金(仮)の計算の際に加味されているものは、
- 給与の額面金額
- 天引きされる社会保険料
- 扶養人数(配偶者や子、親など)
の3つです。
基本的には毎月天引きされる税金(=源泉所得税)が1年を通じて積み上がり、12ヵ月分の税金(仮)として蓄積することとなります。
年末調整は何のためにするのか
先ほどの源泉所得税の流れを見て、
「なんだ、年末調整はそのためにするのかしょうもねえな」
って思ったアナタは鋭いけどディズニー映画は楽しめないタイプかもしれませんね。(ちなみに私はハッピーエンドが約束されたディズニー映画が大好きです。)
①毎月給与から天引きされる税金(仮)×12ヵ月分
②1年働いて稼いだ実際の年収に基づいて計算した税金(正)
①と②では差額が生ずることが普通なのです。
ではどちらの税額に合わせるべきか。
その答えは勿論、②の年収に基づいて計算された税金(正)となります。
年末調整は、税金(仮)⇒税金(正)となるよう、差額の調整を図る作業のことを言うのです。
毎月の給料から預り過ぎていた税金(仮)は還付され、反対に税金(仮)が足りなかった場合には年末調整時に足りない分を徴収されることとなります。
年収が確定した「年末」に、税金の差額を「調整」するから年末調整と言うのです。
還付となるケースが多いのはなぜ?
皆様は年末調整の際、
「還付を期待していたら徴収だったぜ畜生!」
という経験をしたことはあるでしょうか?
おそらく年末調整で徴収が発生する方は珍しいのではないかと思います。
多くの方は還付されるのが当然とさえ思っているのが年末調整。
ではなぜ一般的に還付になりやすいのでしょうか?
それは、給与から天引きされる税金(仮)は、
給与の額面金額、社会保険料、扶養人数の3つの要素でのみ構成されているからです。
「あれ、年末調整のときって生命保険料とか地震保険料のハガキ提出してなかったっけ?」
そうです。それらは税金(仮)では反映されていないのです。
てか年間で支払った生命保険料や地震保険料なんて年の中途ではわかる訳ないから反映のしようがないですよね。
月々の税金(仮)では加味されていない各種控除額が年末調整で初めて使えるようになるため、税金(仮)の過払い分が返ってくる場合が多いというのが年末調整の還付のカラクリです。(住宅ローン控除についても同様で、年末調整のときに適用があれば税金(仮)が1年分まるっと返ってくるなんてことも!)
ちなみにふるさと納税を行う場合、現在はワンストップ特例制度を適用することで、所得税からでなくすべて住民税から控除してもらえますので、わざわざ年末調整や確定申告にて控除しなくとも自動的に翌年の住民税が少なくなります。
では先ほどの少数派である年末調整時に徴収が発生する場合はどんなケースかと言いますと、
- 税金(仮)の時には扶養人数にカウントしてたけど、実際は扶養の枠(配偶者なら年収150万円、その他は103万円)超えてた!
- 給与に比べてボーナスがっぽり貰った!
の2つのパターンが多いです。
税金(仮)の算定の際の扶養人数の誤りについては純粋なミスの場合もありますが、扶養に入れるかどうかも年収(厳密には年収に基づいて計算される所得)を基準としており、こちらも1年終わってみないとわからないため、やむを得ないケースもあるかと思います。
2つ目のボーナスがっぽりのケースのカラクリについてですが、ボーナスからも税金(仮)は天引きされます。
このボーナスの税金(仮)を算定する際に用いる税率は、ボーナスが支給される月の前月の給与をベースに算定されるのです。
この辺りの細かい計算方法は、私達のような業界の方以外は知っててもあまり役に立たないので割愛しますが、前月の給与をベースにして計算するということは、前月の給与に比べてボーナスが著しく大きい場合にはボーナス額面に対する税金(仮)が少なめになります。
そう言われると「給与は抑えてボーナスでがっぽり貰った方が良いやん」って思われるかもしれませんが、結局のところ年収が変わらないのであれば年間の税額(正)は同じであり、あくまで1年の最後に還付なのか徴収なのかが変わるのみということとなります。(還付の方が何となく気分は良いかもしれませんが笑)
年末調整のここがすごい
では年末調整の何がすごいのか。
例えばアメリカでは年末調整という制度はなく、所得があるものは自ら確定申告を行い税金の納付を行います。
それに対して私のような日本のサラリーマンの場合、毎月の給料から音もなく税金が差し引かれ、給与明細をまじまじと見ることもせず手取り額で一喜一憂する(私のような)人間は、このステルス迷彩を纏った税金の存在を認知することすらできないのです。
そのくせ年末調整が終わって還付額が発生すると何故だかとっても嬉しい。
ただ単に税金の過払い分が返ってきているだけだって知っててもすげえ嬉しい。
へそくりで隠しておいたお金の存在を忘れて5年後に偶然見つけたときくらい嬉しい。
オラフの声がピエール瀧じゃなくても違和感ないって気づいた時くらい嬉しい。
年末調整という仕組みは、私達サラリーマンのだらしなさと単純さを見事なまでに手玉に取った制度なのです。
もっと言ってしまえば税金を納めている感覚すら無いままに納税者になっているのです!
素晴らしき年末調整!
恐ろしき年末調整!
VIVA!年末調整!
アモーレ!年末調整!
結びの一番
今日は年末調整のお話をさせて頂きましたが、冗談抜きにして知れば知るほどよくできた制度だと思います。
ただしまじめな話をすると、私達サラリーマンに納税意識が醸成されにくいからこそ我々国民の政治への関心が薄れてしまうという弊害は確実にあると思います。
私達の納税意識が高まれば高まるほど我々の血税の使い道には強い関心が生まれ、国全体がより良い環境へ変革するための重要なステップとなる可能性も高まるのではないかと思います。
そのための第一歩として、まずは年末調整の後に配られる源泉徴収票をじっくり見て、自分自身が1年でいくらの税金を納めていたのかを知ることから始めてみませんか?
では良い週末を♪