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独立開業、副業のイロハ

副業収入を「雑所得」ではなく「事業所得」で確定申告するための基準とは?

会社員の方でも、ご自身のスキルやノウハウを活かして副業を行う人が増えています。

副業による儲けが年間で20万円を超えると確定申告義務が生じますが、

副業の収入を「雑所得」で申告するのか、「事業所得」で申告しても良いのか

この判断は非常に悩ましいところです。

ちなみに別記事でも解説した通り、
「開業届を出せば事業所得でOKなんでしょ?」というのは間違いですのでご注意ください。

【勘違いあるある】副業でも「開業届さえ出せば事業所得でOK」だと思っていませんか?

続きを見る

実務上は開業届の有無ではなく、あくまで個々の実態によって判断されますが、

結論から申し上げますと、
本業があってこその”副業”ならば、それは事業所得ではありません。

これは事業所得として申告するからには、本業と呼べる規模のものを指すからです。

今回は事業所得と雑所得の判断基準について解説していきます。

事業所得と雑所得のそれぞれの”定義”とは?

所得税法上、事業所得は以下のように定義されています。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。

国税庁ホームページより

これに対して雑所得は、

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。

国税庁ホームページより

というように定義されており、
他の所得のいずれにも該当しない「その他の所得」として位置づけられています。

つまりYouTuberやUber Eats配達員、動画編集、オンライン販売などの副業については、

ココがポイント

事業に該当するような規模であれば「事業所得」、
そうでないなら「雑所得」という結論になります。

しかし税務上問題なのは、
事業所得に該当する”事業の規模”について、明確な判断基準がないことなのです。

明確な基準がない ⇒ 過去の判例から学びましょう

「事業所得 or 雑所得」の問題では、過去の有名な裁決事例があり、
その裁決の根拠がひとつの判断基準として浸透しているのが実態です。

以下では裁決事例をご紹介するとともに、
事業所得として申告するための事業規模について検証していきます。

大学准教授の”執筆・講演料収入”は事業所得?雑所得?

この事例は平成26年9月1日の裁決によるものです。

とある大学の准教授が、
自身の執筆や講演によって発生した収入を「事業所得」として申告したところ、
国はこれを認めず、「雑所得」が妥当と判断したことによるものです。

そして最終的には納税者の主張する「事業所得」は認められず、
「雑所得」に相当するものとして判決が下りました。

この事例において、
事業所得に該当するかどうかの判断基準として挙げられたものは以下の通りです。

  • 営利性や有償性の有無
     (ちゃんと稼げていますか?)
  • 反復継続性の有無
     (ある程度安定的な稼ぎになっていますか?)
  • 自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無
     (営業活動など、今後の事業計画に向けて精力的に活動していますか?)
  • 精神的肉体的労務の投入の有無
     (勤め人としての片手間でなく、本業として手間暇かけていますか?)
  • 人的・物的設備の有無
     (必要な設備を揃えたり、人を雇ったりするなど本格的に行っていますか?)
  • 職業・経験及び社会的地位
     (あなたが事業をやっていることは社会的・客観的に認知されていますか?)

これらの項目のいずれかを満たしていれば良いというものではなく、
総合的に勘案して事業に該当するかどうかを判断することが示されています。

ちなみに大学准教授の事例では、

  • 営利性や有償性 ⇒〇
  • 反復継続性の有無 ⇒〇
  • 自己の計算と危険においてする企画遂行性 ⇒×
  • 精神的肉体的労務の投入の有無 ⇒×
  • 人的・物的設備の有無 ⇒△
  • 職業・経験及び社会的地位 ⇒×

このような評価となり、「事業所得」は認められませんでした。

具体的には、

NGポイント

  • 取材活動や出版社等への営業活動を精力的に行っていた証拠がない
  • 平日は毎日大学で講義をしており、執筆や講演活動は限定的であった
  • 物的設備はプリンターなど最低限で、人は雇っていなかった
  • 大学准教授として十分な給与収入を得ていた

これらの側面が事業と認めるに至らなかった要因として挙げられています。

つまり事業としてのビジョン(拡大志向など)や主体的な活動が確認できず、
あくまで本業である大学准教授の片手間での活動として判断されたということですね。

給与収入があるからこそ、「事業所得」の難しさが浮き彫りに

「他の所得があるという理由で事業所得か否かを判断するのはおかしい」

この意見は確かに理解できます。

しかし会社員としての給与収入が「本業」として存在する以上、
別のビジネスを「副業」ではなく「本業」だと主張するためには
2つを比較せざるを得ないのです。

つまり本業である給与収入に対し、

  • 掛けている労力
  • 実際の収入金額
  • 社会的地位
  • 将来のビジョン(及びそれに向けた活動)

このような要素でいずれも劣ってしまうような場合には、

『どちらも本業』ではなく
『本業と副業』の関係性と認識されてしまうことになります。

したがってサラリーマンの方が事業所得として申告するためには、
趣味の延長線上や休日のお小遣い稼ぎのような規模では難しく、

  • 給与収入に負けないくらいの稼ぎ
  • 給与収入に負けないくらいの労力
  • 事業主としての社会的・客観的な地位の確立
  • 将来への事業のビジョンとそれに向けた計画的な活動

これらを十分に備え、”本業”である給与収入と双璧をなすビジネスであることを
自信を持って主張できる状態が望ましいと考えられます。

毎年赤字を出し、給与所得と相殺するビジネスが”本業”と言えますか?

別記事でも解説していますが、
事業所得で赤字を作り、それを給与所得と相殺することで
納税額を圧縮するスキームが横行しています。

事業所得と雑所得の最大の違いは「損益通算」と「青色申告」

続きを見る

このような手法は雑所得では行えないため、
副業をあえて「事業所得」として申告することとなるのです。

しかしこれまでお伝えした内容に当てはめて考えれば、

ギモン

  • 毎年のように赤字を計上している時点で
    本業の給与収入がなければ生活を維持できないことは明らかであり、
    まさに本業ありきの副業では?
  • 仮に事業所得の赤字が一時的なものだとするなら、
    それを脱して黒字化するための計画や取り組みは行っているのか?

このような疑問に対し、合理的な回答ができないのであれば、
事業所得の赤字を給与所得と相殺することは非常に大きなリスクが生じます。

最後に

今回は事業所得と雑所得に関し、その判断基準について解説しました。

明確な基準がないからこそ非常に神経質にならざるを得ない論点であり、
事業所得として申告するならば必ず抑えておきたいポイントです。

ぜひご参考いただければ幸いです。

それでは最後までお読み頂きありがとうございました。
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服部 大

2020年2月に名古屋で独立開業したギリギリ平成生まれのゆとり税理士/中小企業診断士です。 こちらのブログでは、私自身の事務所経営や日々の生活で感じたことを自由気ままに綴っていきます。

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